見守る子どもたちから拍手が沸き起こりました。
2020年12月16日 12時50分「美文朗誦」の最後に「森鴎外作 短編小説『杯』」が掲載されています。原文どおりの全8ページあります。本日、6年生女児が、12分にわたり、私の前で朗々と唱え、見事一発合格を果たしました。廊下で見守る同級生から、やり遂げた瞬間、男女を問わず大きな拍手が沸き起こりました。素晴らしい努力の証です。おめでとうございます。
6年生にとって、「森鷗外の『杯』たった8ページの短編小説」は読んで考えて欲しい一小説です。
~森鷗外『杯』あらすじ~
12歳くらいの7人の少女が、大きな銀の杯を持って泉の水を飲みにやってきた。そこへ、青い目をした外国の少女が、小さな黒い杯を持ってやってくる。
7人の少女は、8人目の少女の、小さくて黒い杯を見て哀れみ、「そんなに小さな杯じゃ飲めないでしょうよ、銀の杯を貸しましょうか?」と問うと、8人目の少女は、こう言います。
「わたくしの杯は大きくはございません。それでもわたくしはわたくしの杯で戴きます」
つまり8人目の少女は「わたしはわたしの持っているものがあるから大丈夫」とその申し出を断るのです。
「美文朗誦」に掲載したこの小説で、卒業する6年生に伝えたいことも、まさにここなのではないでしょうか。
自分の生まれ持った「杯」は自分しか持っていないのだから、それを武器に戦うしかない。人の真似したり、持っていないものを羨んでも仕方がない、ということです。
この小説を読んで、私も勇気づけられます。自分が持っていない能力を沢山持っている人を、羨ましいと誰もが思うでしょう。意味がないこととわかっていながら、そういう感情って知らず知らずのうちに抱いてしまうと思うんです。
ですが「杯」を読み、たとえ人と違っていても、特別なものが何もなくても、自分が持っているものを愛し、活かして、生きていけばいいのだと気づかされます。
このように、意味がある『杯』です。どうか、卒業までに読んで欲しいですね。